『Realforce 23U』は高級キーボードで有名な東プレの「Realforce」というブランドの製品。
「Realforce」は優しく滑らかな打鍵感と堅牢性が特徴で、昔から愛好家が多い。
国内製造のためその分価格も高いのがネックだが、この「Realforce」の使用感は他のキーボードで代えがきかず、価格に関係なく購入を繰り返してしまうのだ(私もその一人)。
今回はその東プレ「Realforce」シリーズの中でもひときわマニアックな、テンキー『Realforce 23U』をレビューしていこうと思う。
『Realforce 23U』を使うデメリットとメリット
東プレ製テンキー『Realforce 23U』は数値入力に特化した、テンキー(数値入力デバイス)である。
それ以外の特別な機能は何もない。
これまで感じたデメリット
私はこのテンキーを10年使用してきた中で感じるデメリットがいくつかある。
- 高い → テンキー一つ13,000円。
- 重い → 300gあるので持ち運びしずらい。
- ワイヤレス接続できない(Bluetooth非搭載) → デスク上でケーブルが邪魔。
- USBケーブルが短すぎる → 80cmはさすがに短い。デスクトップPCに届かないので延長ケーブル必須。
高く、重く、有線接続しかできないのにケーブルが短いという、今どきの働き方に合わない製品といえるかもしれない。
テンキーという性質上、「数字をたくさん入力する人」以外は全くと言っていいほど縁のない製品だ。
「入力のしやすさ」という最大のメリット
だが、その「数字をたくさん入力する人」にとってこのテンキーは、デメリットを帳消しにして余りあるほどのメリットがある。
唯一無二の「入力のしやすさ」
テンキーは数多くの会社から発売されているが、この東プレ製『Realforce 23U』にしかない機能、このテンキーを使うメリットがある。
この一点。
この一点のみに、『Realforce 23U』の価値は凝縮されている。
この「入力のしやすさ」こそが、私の10年間の経理業務を10年間支え続けてくれた。
無くてはならない、仕事道具
私がテンキーを探し始めたのは、私が仕事で経理業務に携わり始めた12年前(2008年)頃。
当時は会計システムへのデータがすべて手打ちだったため、とにかく数値の打ち込み量が多かった。
当時使用していたのは会社から支給された「メンブレンのテンキー付きキーボード(1,980円)」。
経理担当者のメインイベントである年度決算を終える頃には、右手首は腱鞘炎、肩や首は針治療に行かねばならないほどバキバキとなり、身体が悲鳴を上げる始末。
正直、まともに仕事をできるような状態ではなかった。
症状がテンキーとマウスを多用する右半身に集中したことから、「このキーボードとテンキー、身体に合ってないんじゃないか?」と気が付いた。
その後、10数個のテンキーを購入し、試し、失敗を繰り返してようやく見つけたのがこの『Realforce 23U』だった。
このテンキーに出会えたおかげで、体の痛みや腱鞘炎が消え、タイピングも早く、正確になることで業務時間が大幅に短縮された。
今の私にとって、なくてはならない仕事道具の一つだ。
「静電容量無接点方式」が搭載された唯一のテンキー
『Realforce 23U』が属している「東プレRealforceシリーズ」は「静電容量無接点方式」というキー構造が採用されている。
簡単に言えば、キーを押し込んでもスイッチがぶつからない構造のため、
- 非常に軽快なキータッチ
- チャタリング(接触異常による誤入力)のない正確なタイピング
- 高い耐久性
が実現されている。
この特別な入力感を実現する静電容量無接点方式が採用されたテンキーは、世界でこの東プレ『Realforce 23U』しか存在しない。
だからこそこのテンキーは特別なのだ。
【最大のメリット】非常に軽快なキータッチ
静電容量無接点方式のキータッチは非常に軽快で、他の機器では代えがきかない。
だが、その良さを感じるためには多少の時間がかかる。
Step1 はじめは違和感
私はこのテンキー『Realforce 23U』とキーボード「Realforce 91U」をともに10年ほど使用している。
Realforce製品の打鍵感は
- 「スコスコ」と絶妙な抜け感のある押し心地
- 高速タイピングを可能にする程よい跳ね返り
が特徴だ。
だが、使い始めのころは以前のキーボードやテンキーと比べ、劇的な変化を感じない。
「高いモノだから良いものなのだろう」と頭でその良さを理解しようとしてしまうのが、使用し始めて間もなくの頃の感想だ。
Step2 次第に身体になじんでくる
使用し始めて2~3か月経過した頃、あることに気が付いた。
「右手、痛くならないな」
既に四半期決算を乗り越え、身体も限界に近づくころだったが、不思議と右手や右肩の痛みを感じなかった。
それと同時に、このテンキーへの入力速度が速くなっていることにも気が付いた。
『Realforce 23U』が身体になじんだ瞬間だった。
Step3 高速タイピングで業務効率向上
いろんな部署から次から次へと送られてくる数字の波を、右手が軽く受け流し、入力が加速していく。
身体が静電容量無接点方式の「抜けるような押し込み感」と「程よい跳ね返り」が体に負担をかけず、高速タイピングを実現する。
入力時間が短縮されるため、会計データ入力等の業務効率も向上。
決算期の残業時間も減り、明らかに家に早く帰れるようになった。
Step4 さらなる効率化、左手は『Realforce 23U』専用
入力があまりに軽快なので、気が付けば「どちらかの手をテンキー専用にした方が効率がいいのでは」と考えるようになった。
もともとテンキーとマウスの持ち替えは手間だったため、結局、
- 左手:『Realforce 23U』専用
- 右手:マウス+キーボードショートカット+予備のテンキー
という操作方法を試すことに。
左手は『Realforce 23U』の専用となるべく練習を重ね、今では右手より早くキータッチができるようになってしまった。
両手で自由にキータッチができるようになることで、右手でマウスを握ろうが左手で資料をめくろうが、何をしててもテンキー入力ができるようになったため、業務効率は目を見張るほど向上した(ような気がする)。
10年間腱鞘炎にならない
『Realforce 23U』に出会ってから10年、それ以前に多発していた腱鞘炎やひどい肩こりは一度も発生していない。
『Realforce 23U』が私の入力作業をサポートしてくれている結果といえるだろう。
テレワークで感じた『Realforce 23U』の大切さ
コロナ禍が始まった2020年3月以降、テレワーク開始により自宅での業務時間が圧倒的に増えたため、会社で使用していた入力デバイスを自宅に持ち帰った。
たまに会社へ出社した際の業務は、懐かしの会社支給メンブレンキーボードで行なうことに。
メンブレンキーボードで打ち込みを開始し、2時間ほどが経過した時
と感じた。
懐かしい、『Realforce 23U』と出会う前のあの頃と同じ痛みだった。
それほどまでに静電容量無接点方式の打鍵感に身体がなじみ、無理なく業務ができていたのだろう。
業務スピードの面でも健康のためにも、『Realforce 23U』無しの入力作業は考えられない。
仕事道具にできるレベルの製品完成度の高さ
私は仕事道具に
- 正確性
- 安定性
これらの両方が求めている。
『Realforce 23U』はこの10年間、「正確性」「安定性」二点を十分に満たし続けてくれた。
【正確性】チャタリングのない正確なタイピング
キーボードやテンキーを使用してたまに発生するチャタリング(接触異常による誤入力)は、集中力を切らす一番の原因でなので発生してほしくない。
私の経験上、チャタリングは
- 接点が安価なキーボード
- タイピング速度に反応できないとき
によく発生する。
一度発生すると、そのキーボードやテンキーには信頼できなくなるため仕事では使用しなくなる。
ちなみに、『Realforce 23U』では10年間一度もチャタリングが発生していない。
物理接点がない静電容量無接点方式のメリットともいえる効果だ。
同時入力にも対応
キー入力感知の精度も高いため、かなり高速で入力(ほぼ同時押し)になっても入力数値を読み取ってくれる。
とにかく数値打ち込みをするときにはブラインドタッチで黙々と数値を高速で打ち込むため、入力順番を間違えないのは大変ありがたい。
【安定性】国産で高耐久な仕様
安定性という意味で、『Realforce 23U』の高い耐久力も魅力だ。
仕様は下記の通りとなっている。
製品仕様 | |
キー刻印 | 昇華印刷 |
スイッチ | 静電容量無接点方式 |
スイッチ寿命 | 3,000万回以上 |
重量 | 300g |
サイズ | 93×152×37mm |
ケーブル長 | 0.8m |
キー荷重 | ALL45g |
キーストローク | 4mm |
生産国 | 日本 |
『Realforce 23U』は昨今の電子機器には珍しく、日本国産製品のためそれだけで信頼性が高い。
スイッチの寿命は3,000万回と一般の利用ではまず到達しない入力回数だ。
私の場合だと既に到達しているキーも存在するかもしれないが、音鳴りやがたつきもなく問題なく動いてくれている。
また、これだけの酷使していると、キートップの文字がかすれたりはがれてきてしまうものだ。
だが、「Realforce」シリーズのキーボードやテンキーのキートップには「昇華印刷」という、非常に耐久性に優れた文字印刷が施されているため、10年使用した今でも全く文字がかすれることはない。
高耐久で安定した仕様は、このテンキーを「手になじんだ仕事道具」として長く使えるようにしてくれている。
【その他の機能】背面DIPスイッチでショートカットキーが使用可能
『Realforce 23U』は本体背面に機能切り替え用のDPIスイッチが搭載されている。
DPIスイッチの機能
『Realforce 23U』には背面に4つのスイッチがあり、ON/OFFを切り替えることで下記表のような機能を使用することができる。
DIPスイッチ | キートップ機能 | ||||
SW1 | OFF | Tab | BS | Shift | = |
ON | Cut
(Ctrl + X) |
Copy
(Ctrl + C) |
Paste
(Ctrl + V) |
BS | |
SW2 | OFF | 00 | |||
ON | 000 | ||||
SW3 | OFF | Num Lock 非連動 | |||
ON | Num Lock 連動 | ||||
SW4 | OFF | 通常モード | |||
ON | 未使用 |
私は普段はすべてOFFの状態だが、Excelのなどでコピペを多用するときは「SW1をON」にして使用している。
キーコマンドを記憶することはできないが、選択肢があることはありがたい。
その他の機能:スタンド内蔵で高さを変えられる
『Realforce 23U』は本体裏にスタンドを内蔵しているため、「高い」「低い」の二通りで使用することが可能だ。
私は最小動作で各キーにタッチしたいため、スタンドは立てっぱなしだ。
改善希望:ケーブルの長さが足りない!
先にも述べたが、このテンキーのUSBケーブルは0.8mと非常に短い。
デスクトップPCで使用する場合は、まずマザーボード側の背面端子には届かないため、延長ケーブルが必須。
もし後継機が出るのであれば、Bluetooth搭載でなくてもよいのでこのケーブルをあと50cmほど長くしてほしい。
(お願いします!)
疑問:テンキー付きの「Realforce」キーボードではダメなのか
先も述べたように、私は
- テンキー :Realforce 23U
- キーボード:Realforce 91U(テンキーレス)
を使用している。
よく周りからも「テンキー付き買えば良かったんじゃないの」と聞かれることがある。
別々に買うより価格も抑えられるし、デスクのケーブルも一本で済むのでスマートだ。
だが結論から言うと、その選択は私にとっては「ダメ」なのだ。
テンキーとキーボードが分かれるメリット
私が長年テンキーと、キーボードを分離させてきたのには理由がある。
それは、
ということだ。
①手首の「角度」に合わせて配置
テンキー付きのキーボードは、「テンキーの角度」を変えられない。
この角度が変えられないことで、「テンキーの角度に手首の角度を合わせながら」入力することになる。
機械に人間の体を合わせるとどうなるか。
結果は簡単、「腱鞘炎」と「肩こり」が発生する。
そうならないためには、「ヒトの身体に機械を合わせる」ような仕組みづくりが重要。
テンキーが分離しているからこそ、「自分の手首の角度」に合った場所に配置して無理なく入力業務を行なえるのだ。
②好きな「場所」に配置
デスク上にはマウス・文房具・資料など様々なモノが置いてある。
その都度使用する場所やサイズも違うことから、モノによってはキーボードやマウスなどと干渉してしまい、入力作業がしずらくなることがある。
その都度キーボードを動かしたり、資料を迂回しながら指先で入力しなければならなかったりと、業務効率低下が著しい。
そんな時テンキーが分離していると、テンキーやキーボードを好きなところに置くことができ、資料や物品との干渉を回避しながら入力できる。
「好きな場所に配置できる」ことも、キーボードとテンキーが分離しているメリットだ。
まとめ
今回は、東プレ製テンキー『Realforce 23U』の紹介をしてきた。
静電容量無接点方式を採用したことによる軽快で快適な入力。
日本国内製造による製品の完成度の高さなど、ハイエンドテンキーとしての素晴らしさが製品に現れている。
私も10年このテンキーを使用し、その間たくさん他のテンキーを使用してきたが、いまだこのテンキーを越えるモノにであったことはない。
テンキーという「入力デバイス」を、もっとも「入力しやすい」製品として作り上げたのが『Realforce 23U』だと思う。
お仕事でたくさんの数値を入力する方、長く使える仕事道具としてのテンキーをお探しの方にこのテンキー『Realforce 23U』を是非お勧めしたいと思います。