私は仕事のメモやアイデア帖としてノートにメモ書きをすることが多い。
仕事のほとんどは経理やデザインなどパソコンで行うことがほとんどだが、やはり自分の頭を整理するには手書きが一番だと思っている。
テレワークが始まって以降はパソコン類だけではなく、ノートや文房具も家と会社間で持ち運ぶことが多くなった。
ただ、運搬する荷物をあまり多くはしたくないので、常時持ち歩きたい文房具を選抜してペンケースに入れて持ち運んでいる。
そこで今回からははいつも携帯している、テレワークにおすすめの文房具を紹介していきたいと思う。
紹介するのは『カヴェコ ペンシルスペシャル』
今回紹介するのはシャープペン。
ドイツ、ニュルンベルクにあるグッドバレット社から発売される『カヴェコ ペンシルスペシャル』だ。
『カヴェコ』とは?
もともとは「Kaweco(カヴェコ)社」が1883年よりドイツ、ハイデルベルクで生産していた文房具ブランド名である。
数々のヨーロッパの戦果を潜り抜け、第二次世界大戦期の生産モデルでは現在のペンシルスペシャルのルーツとなる「クリップなしモデル」が販売されるなど、その時のドイツの時世を色濃く反映した、歴史ある文房具メーカーでもある。
しかしながら、同社は業績の悪化により1976年、約90年の歴史に幕を下ろすことに。
後に前述のグッドバレット社が「Kaweco」の商標を取得して生産が再開。
当時の面影を残したクラシカルで機能的なペンが、再び世に送り出されることになった。
カヴェコ社があったハイデルベルクには旅行で訪れたことがあり、美しい街並みや景色にすっかり心を奪われた。
(付近を流れるネッカー川をまたいで見る街並みと古城がとても美しい。)
このペンを手に入れたのも、「もともとハイデルベルクで作られていた」というストーリーによるところが大きい。
それ以来、このペンも含め、手元に置くものは何かにつけてドイツ製品が増えていくことになった。
(ヘッドホンはゼンハイザー、カメラのレンズはツァイス、万年筆はファーバーカステルといった具合)
見た目はとにかくシンプルで重厚感たっぷり
『カヴェコ ペンシルスペシャル』は購入時、このような黒いケースに包まれている。
カヴェコ創業の1883年の刻印が控えめに記載されている。
ケースの中にはクラシカルな真鍮カラーのペンケース。
立体的なエンボス加工が施され、レトロな外観のだがとても軽く実用性にも優れている。
中身を取り出せば立派にペンケースとして使用できる。
ペンケースを開けると、中には一本のペン。
マットな黒地で吸い込まれるような質感。
シャープペンにしてもボールペンにしてもどちらかといえばつやつやした質感が多い中で、明らかに異彩を放つ風貌。
8角形の軸が特徴的で、どちらかといえば太めの印象。
これまで8角形軸のシャープペンを使用したことはなかったが、不思議と使いずらさは感じない。
軸の表面にはシンプルに「Kaweco Special 0.5 Germany」とシルバーの文字でで書かれているのみ。
デザインというデザインはほとんどない。
見るからに無骨でシンプルだが、見た目ではわかりにくい機能美にあふれた姿は、ドイツ製品らしさあふれるペンともいえる。
手に取ると思いのほか軽い
見た目の重厚感とは裏腹に、手に取った感覚は「意外と軽い」ことにおどろいた。
万年筆や、メタル素材が使われているボールペンを使用する方には十分に軽く取り回しやすいペンだ。
一方で鉛筆や一般的なシャープペンを使用している方には、少し重く感じるかもしれない。
筆記用具は見た目の装飾も重要だが、長時間使うことの多いシャープペンは軽く手首にやさしいことも大切。
触り心地
触り心地はサラサラとしたマット地。
指紋が気になるという評価も見受けられるが、私はそこまで気にならない。
確かに多少の指紋はつくが、どちらかといえばサラサラの感触が心地よいため、指紋は気にならないというのが本音かもしれない。
ペンの構成パーツと特徴
本体をパーツごとに分けてみると全部で6つに分かれた。
- 送り出し機構部
- ペン先
- ノックノブ
- 軸
- 芯入れ
- 消しゴム
送り出し機構部:真鍮製
先端部の芯送り機構は真鍮で作られており重量感たっぷり。
また、それぞれ接続部分にゴムパッキンが組み込まれている。
そのため、ペン本体のがたつきがほとんどなく、一本筋の通った安定感のある書き心地を提供してくれる。
ペン先を回すると、ゴムパッキンが効いているため「ぬるり」とした感覚と共にゆっくりと開いていく。
古い重い扉をゆっくり開いていくような、ちょっとワクワクするような感覚が楽しい。
ペン先:ステンレス
先端には2mmのガイドパイプを備えており、書いていていて全くブレがない。
製図ペンとしても使用可能。
軸との接続部分も厚みたっぷりにできており、安定感に一役買っている。
ノックノブ:アルミ製
ここにもパッキンが組み込まれているためペンとしての安定感が向上。
上部にはカヴェコのロゴの象嵌がはめ込まれ、シルバーのロゴマークが力強く輝いている。
ちょっとした造形にこだわりがあるのもこのペンのいいところ。
軸:アルミ製
8角形の軸はかなり薄いアルミで仕上げられており、強度を保ちながら軽量化が図られている。
万年筆などと違い長時間使うことの多いシャープペンは、見た目重厚感があったとしても実際は軽い方がうれしい。
薄く削りだされた軸は軽量化に一役買っているのだろう。
芯入れ:樹脂製
基本的には御表に出ていない部分であり、樹脂製でも強度に不安はない。
このような目に見えない部分でさらなる軽量化を図っているのだろう。
消しゴム
消しゴムは非常に控えめなサイズ。
実際に使うというよりは、「消しゴムがある」という安心感を提供してくれている。
『カヴェコ ペンシルスペシャル』の素晴らしいところ
低重心設計で書きやすい
このペンの素晴らしい点の1つは「低重心」であること。
ペンの重心は主に真鍮部品が多く使われる先端にきている。
個人的にはこの低重心設計がとても良いバランスで、自然にペンを構えることができる。
仕事で自分の考えをまとめるときはノートに書き込みをすることが多く、1回あたり2~3ページ位を使用するため意外と手が疲れる。
カヴェコペンシルスペシャルと出会ってからは、長時間の筆記も苦ではなくなった。
このペンはこれまで出会ってきたシャープペンの中で、文字を書き続ける性能としてはトップクラスに位置すると感じている。(少なくとも私の中では1番。)
このペンに出会って初めて、ペンの重心の大切さに気づかされた。
ノックのクリック感が最高
このペンの素晴らしいところのもう一つは「ノックの感触」。
このペンはシャープペンシルなので芯を送り出して使用するが、この時の送り出しの感触が非常に素晴らしい。
ノックノブを押したときの「コッコッコッ」という独特のクリック感が非常に癖になる。
ペン先端部の三ツ割チャックを止める「真鍮の輪」が絶妙なチカラで止められており、それがこのクリック感を演出してくれている。
このペンを筆箱から取り出して、すぐにでも使いたいと思わせる機能。
文字を書く機能だけでなく、書く前の準備すら楽しませてくれる素敵なペンだ。
気になるところ
価格
気になるポイントとして挙げられるのは価格。
シャープペンが1本5,500円するということだ。
私もこれまで製図用ペンなどを使用してきたが、それでも1本1,000~2,000円程度。
購入するときはそれなりに勇気が必要だった。
ただ、購入してみればその良さをふんだんに感じられるため、ディナー一回を我慢してぜひ手に入れてみてほしい。
塗装のはがれ
私はまだ発生していないが、長期間使用していると先端口金部分の塗装がはがれてくるようだ。
これを自分のペン「らしさ」としてとらえるか、塗装の甘さととらえるのはその人次第。
筆記用具に限らず、自分の道具は愛着をもって使いたいもの。
ワインのような経年変化として楽しめるならよいが、気になるようであれば購入されないのがおすすめだ。
ペンは土屋鞄のロールペンケースで持ち運び
最近はテレワークの関係で会社↔自宅間で文房具を持ち歩くことが多くなった。
持ち運びが必要になったときはこの土屋鞄のロールペンケースを使っている。
ポケットが5つついていて、いつも使っている筆記用具をすべて入れることが可能。
革も牛本革「トーンオイルヌメ」を使用しているため、非常にやさしいさらさらとした手触りがとても気に入っている。
とってもおススメのペンケースだ。
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一緒に使っているノートもドイツの「ロイヒトトゥルム1917」。
万年筆やボールペンのインクが裏抜けしない、とっても使い勝手の良いノート。
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まとめ
今回は私がメインで使用している『カヴェコ ペンシルスペシャル』を紹介した。
非常なシンプルなデザインの中に、「書く」ということへの機能を楽しさを詰め込んでくれた大変素晴らしい一本だと思う。
価格は5,500と少々値が張るが、それでも「このペンを使いたいから文字を書きたい」と思える文房具に出会うことはなかなかない。
文字を書く時間を楽しくしてくれる、美しい筆記用具に出会えたことに感謝したいと思う。
これからもしっかり付き合って、塗装がはがれても大事にしてあげたいと思う。